ラジオ収集と修理、販売で良い事の一つは古今東西のラジオを一堂に会して比較出来ること。勿論全てが販売当時の音質、感度を持って居るわけではないし、比較して居る小生の耳だって怪しいものです。尤もこの歳になって割と確信を持って言えるのは人間の本来持って居る能力には大きな差はないということ。65を過ぎて周りを見回しての実感です。故長岡鉄男氏が晩年は彼を慕って集まってきた素人の皆さんに製品の試聴は任せ、ご自身は専ら製品の中身や重さや造りの批評をしていました。此れはご自分で自身の老を感じていた一方で素人の方々の耳を信じていたからでしょう。オーディオ界で言えばステレオ誌の柳沢さんという方は異常な程に鋭い聴覚と感覚を持たれていて、色々な試聴記を読んで小生常々舌を巻く所ではありますが、そういった極少数の天才を除けば皆さんの耳に大きな差異は有りません。多分良いと聴こえる音は他の皆さんにも良い音なのだと思います。偶に調子はずれな評論家、メーカーの提灯記事専門家の様な方も居ますが時間が経つと不思議やそう言う方々は何処かに消えて居ます。話が長くなりましたが、この個体の調整を兼ねて小一時間程色々なラジオとの比較試聴をしました。比較対象はThe11、ICF7600A、ナショナルRF 888、同RF 636、Tecsu pl-380。驚くのはこのワールドボーイSS、目立って良い音です。聞いていたのはクラシックですが、各楽器の音は勿論、アナウンサーの声も一番明瞭でリアルでした。同時代の上級機や、より新しい物よりも良い音であったのは驚きです。感度、安定性問題無し。53年前のラジオですよ。但し、最新の機械の様なワイドレンジのハイファイではなくあくまで心地良い音です。更にこの個体の驚きはそんなに古い機種なのにやれた感じが当初から殆ど無かった事。勿論無傷では無く向かって左側面にぶつけた跡、トーンツマミに錆とメッキ剥離はありました。けれど、それ以外は美品、完動品です。とても50年以上前のラジオとは思えない。例えば皆さんの手元にこの年代のものがもし有れば基本はボロボロの筈です。多分コレクターの方が大事にとっておいたか、保存状態の良い所に長期保管されていたのでしょう。何れにしても音の良い丈夫なラジオでFM、AMを聞きたい、且つ美品が欲しいと言う方々にはお勧めです。電池、自作ACコード付。